ガス機器や石油燃焼機器がある火気使用室における換気設備については、排気筒などの自然換気設備の場合や、換気扇、排気フード等の機械換気設備の場合など、換気のパターンがいくつかあります。ここでは、厨房や給湯室における一般的な換気方式を想定して、要点をまとめました。

燃焼機器の消費量(発熱量)を調べる

厨房など調理室では、ガステーブルコンロ、ガス炊飯器、ガスフライヤー、ガスグリラーなどが据え付けられています。また食洗機も給湯部分がガス機器になっていることもあります。また給湯室では、壁付けの瞬間湯沸器が設置されていることがよくあります。

まず必要換気量を算出するためには、どんな機器がいくつ設置されていて、その燃焼機器の消費量(発熱量)が何kwなのか把握しなければなりません。

ガス機器の消費量(発熱量)を知るためには、機器の本体側面などに貼られている銘板で確認するのが最も確実でしょう。ただし、銘板が剥がれて無い場合や、印字が薄くなって読めない場合、油汚れで判読できない場合など、が多々あります。このような場合でも、できるだけその製品を特定するため、品番だけでも表示から判別できないか、メーカーはどこか等、情報を拾ってメーカーのカタログやホームページで調べて確認します。

ガス機器(銘板)
消費量(発熱量)の表示に「kw」表示がなく「kcal/h」カロリー表示のみになっている場合があります。この場合、「1kw≒860kcal/h」であることから、860で割り算するとkwが求められます。

消費量(発熱量)は機器によって大きく異るものですので、見た目が似ているからやコンロの口数などだけで、類似品の消費量を参照するのは注意が必要です。
また、設計図書や設備仕様書などが残っていれば、それをもとに割り出すこともできます。しかし、設計図書通りの機器が実際に設置されているか確認しなければなりません。工事の途中で機器の変更があることもよくありますし、竣工から年数が経てば機器の入れ替えや変更がなされていることもあります。
どうしてもわからない場合は、ガス器具の発熱量の「参考値」が換気扇メーカーホームページや、定期報告の実務者テキストなどに記載があります。

ガス器具 発熱量 kw
ガスコンロ(1口) 2.6~3.0kw
ガスコンロ(2口) 5.0~6.0kw
ガスコンロ(3口) 6.5~7.5kw
ガス湯沸器(5号) 10.5~11.7kw
ガス湯沸器(8号) 16.7~18.6kw
ガス炊飯器(2L) 2.0~2.2kw
ガス湯沸器(3L) 2.2~2.7kw

※出典:「2014東京都建築設備定期検査報告実務マニュアル」より一部抜粋

換気型式の確認

火気使用室の必要換気量を求める場合、換気型式を特定しなければなりません。これは換気型式によって計算式に当てはめる係数が変わるためです。
係数「n」は以下のように決められています。

  • n=40:排気フードなし、又はⅠ型・Ⅱ型に当てはまらないフード
  • n=30:排気フードⅠ型
  • n=20:排気フードⅡ型
  • n=2 :煙突

換気型式Ⅰ型
換気型式Ⅱ型

12kwを超えるガスローレンジや回転釜、ガス茹麺機など、フード下端から1mの規定を適用すると、調理作業に支障が生じてしまう場合があります。こういったケースでは、排気フードが設置されていますがn=40で計算することになります。

必要換気量の算出と換気量測定

火気使用室における必要換気量の計算式は以下のようになります。

V=nKQ

V:必要換気量 (m3/h)
n:換気型式 40・30・20・2
K:理論廃ガス量 0.93(m3/kw・h) 都市ガス(LP、プロパン主体)
Q:燃焼機器の消費量(発熱量) kwの値

先にみてきたように、調べたガス機器の消費量(発熱量)と排気フードの型式に、理論廃ガス量の0.93をかければ「必要換気量」が求められます。この必要換気量に対して、実際の測定風量が上回っていればOKということになります。

排気フードの換気量測定

※参照「機械換気設備の換気量測定〈無窓の居室〉

無窓の居室の換気量測定と同じように風速計を使って、実際の風量を計測していきます。風速計は熱線式タイプの方が測りやすいと思います。熱線式の風速計は、吸込口に対して向ける方向が決まっていますので、間違わないように注意します。


厨房でよく見られる業務用フードの場合、油汚れが発生するため通常グリスフィルターが取付けられています。こういったフィルターがあるため、開口面積に「開口率」をかけて開口面積を算出します。
例えば、一般的な「バッフル型」のフィルターは、ステンレスプレートが交互に重なるような構造になっており、開口率は50%で計算します。

排気フード バッフル型

測定点は、およそ15cm間隔程度に取る場合が多く、グリスフィルター1枚の大きさに応じて、縦横の長さを1/2や1/4に分割して偏りなく測定します。ただし現場レベルでは、あまり画一的にならず、平均値が出るようにたくさん測定しておく方が良いでしょう。フィルターの汚れ具合やダクトの位置などから、相当に風量の偏りが発生しているケースもあります。

測定風量の計算式は以下のようになります。

測定風量=3600×開口面積(m2)×測定風速(m/s)

計測した風速で風量計算をして、必要換気量を上回っているか確認する際、現場ですぐに確認したい場合があります。また報告書作成時に、計算を何度も繰り返すのは面倒なものです。そこで換気量測定の計算フォームを用意しましたのでご活用下さい。
〈火気使用室〉換気量計算フォーム

検査では風量測定を行うとともに、油汚れによる能力低下がないか、機器自体の経年劣化や故障がないか、フィルターの汚れによる目詰まりはないか、ダンパーが閉鎖していないか、給気口の設置状況はどうか、なども合わせて確認します。

主な厨房機器メーカー

ガス機器などは厨房機器メーカーのホームページの製品情報から探すことができます。また品番が分かる場合は、品番で検索をかけることで製品カタログや製品詳細資料などが見つかります。銘板が判読できない場合でも、メーカーロゴなどからメーカーが特定できれば、ある程度の機種までは探すことができます。
主な厨房機器メーカーを以下に掲載いたしますのでご参照下さい。

厨房機器

  • 株式会社フジマック fujimak
  • 株式会社マルゼン Maruzen
  • タニコー株式会社 tanico
  • オザキ株式会社 OZAKI
    (※令和元年8月破産→メンテナンス・部品販売等、一部マルゼンへ事業譲渡)
  • 株式会社コメットカトウ COMET
  • 山岡金属工業株式会社 SILK ROOM
  • 北沢産業株式会社
  • 給湯器

  • リンナイ株式会社 Rinnai 瞬間湯沸器
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