「無窓の居室」にあたるかどうかの判断
まず居室に「換気上有効な窓」があるかどうか、図面及び現地で確認します。
ここで言う「居室」とは、住居・執務・作業・集会・娯楽その他これに類する目的の為に、継続的に使用する室を言います。その為、トイレや浴室、更衣室その他機械室などは一般的に居室に該当しません。
建築基準法第28条第2項で、居室には、その部屋の床面積の「1/20以上」の有効な開口を設けることが規定されています。自然換気で必要な換気量を確保するためには、床面積の20分の1以上の開口がないといけないことを意味します。
「1/20以上」の有効な開口がない場合は、無窓の居室ということになり、機械換気設備の設置が必要とされています。その為、必要換気量を満たしているか機械換気設備の定期検査を実施しなければなりません。
換気上有効な窓の開口部の考え方
1/20の開口があるかどうかを計算する場合、床面積は図面等から分かったとして、換気上有効な窓の開口部の面積はどのように測ればいいのでしょうか。
以下に参考となる考え方を示します。
最も多いと思われる引違い窓では、窓面積の約1/2が換気上有効な開口とすることができます。外倒し窓のような場合は、図のように倒した角度が45°以上あれば、その窓面積全体が有効な開口とできます。また倒した角度が45°ない場合は、その実際の角度を45で割った率でかけた面積が、有効な面積となります。回転窓のような窓については、概ね窓面積全体を有効な開口として計算することができます。
劇場等の居室について
劇場・映画館・公会堂・集会場等の用途の居室においては、窓の有無にかかわらず機械換気設備の設置が必要です。これは不特定多数の人が集まる建物用途の場合、窓があったとしても開放されるとは限らないためです。その為、無窓の居室と同じように劇場等の居室も、換気測定など定期検査の対象となっています。
建物用途による特有の事情
無窓の居室における定期検査で、近年特に注意したい建物があります。2008年に大阪で16名の死者が出た個室ビデオ店火災事故がありましたが、あのような個室ビデオ店、カラオケボックス、ネットカフェなど内部で細かく間仕切られた建物では、使用目的・サービスの性質上、各個室は無窓の居室となっていることが多く見られます。個室の部屋数も多くなることから、定期検査には時間と労力がかかります。さらには、24時間営業の場合や、営業時間中の検査実施を余儀なくされる場合には、どうしてもお客様が利用中で検査できない部屋が出てきます。長期間検査できない部屋が発生しないように、店舗側にも協力をお願いし、計画的に換気設備検査を進めていく必要があります。
建築基準法、消防法に違反するケースも散見されるため、検査者としては慎重に建物の状況を確認しておきたいところです。
〈関係法令〉
建築基準法 第28条第2項
建築基準法 第28条第3項