建築基準法第12条で定められています「定期報告制度」には、主に3種類の報告内容があります。

1.特定建築物
2.建築設備
3.防火設備(平成28年6月施行の法改正で新設)

本記事は、2.の「建築設備」について内容をご紹介いたします。

建築設備の定期検査とは

建築基準法第12条3項に「特定建築設備等」の定期検査について記載がありますが、これは昇降機と昇降機以外の建築設備について定められている部分で、細かな内容については書かれていません。昇降機(エレベーター)等につきましては、専門のメンテナンス会社が毎月の自主検査や年に1回の定期検査を実施していることが多いことから、本記事では割愛させて頂きます。

昇降機以外の建築設備は大きく分けて4種類あります。

1.換気設備
2.排煙設備
3.非常用の照明器具
4.給水設備及び排水設備

以下にそれぞれの内容についてご紹介いたします。

その前に「建築設備」の定期検査対象については、国が定める政令での定めはなく、各地の特定行政庁に任されています。その為、建物の所在地の特定行政庁によって、内容が大きく異る場合がありますのでご注意下さい。
対象となる建物の用途や規模についても各特定行政庁で違います。都市部では建物利用者が多いことから比較的多くの用途、より小さな規模の建物まで報告対象になっています。また検査項目については、4種類すべての項目について報告をしなければならないところもありますし、給排水設備だけが免除になっている行政もあります。地方では、そもそも建築設備定期検査の報告義務のないところもあります。また、特定建築物の定期調査時に合わせて建築設備の検査項目もみるというところもあります。

換気設備

まず一つ目が換気設備です。この換気設備は「機械換気設備」のことで、給気や排気を行なう大切な設備です。天井換気扇など比較的小さなものから、建物全体の換気を行なう大きな設備まで建物によって様々です。また換気方式も建物によって色々あります。
では実際にどのようなところの検査をするのかというと、主に「無窓居室」「火気使用室」「居室等」となります。これだけでは分かり辛いのでひとつずつ見てみましょう。

無窓居室

文字通りに解釈すると窓のない部屋です。建築基準法では、換気に有効な開口(窓)がない部屋には、強制的に換気を行なう機械換気設備の設置が義務付けられています。(※その部屋の床面積の20分の1以上の開口が必要。窓があっても小さければ無窓居室になります。)
この義務付けられた機械換気設備が正常に作動し、その部屋の必要換気量を満たすだけの空気の流れを作れているか確認する作業になります。機器の故障やフィルターの汚れ、ダクトの詰まりなど、様々な理由で当初設計時に予定していた風量が出ていないことがあります。また、部屋の使用状況の変化や間仕切り壁の変更など、そもそもの条件が変わった為に、機器の容量不足となっていることもあります。

上記のように、無窓居室に設置されている換気設備の換気量を風速計を使って測定していきます。換気測定が難しい場合などは、二酸化炭素(CO2)濃度計での含有量測定で代替えできますので、条件によって使い分けます。

火気使用室

厨房や給湯室などにガス機器等の燃焼機器が設置されている場合に、その燃焼機器に対する必要換気量が換気設備で排気できているか確認します。機器の必要換気量は、機器の熱量や消費カロリーによって異なります。一般的に厨房などの調理室では換気フードが設置されていますので、そのフードの換気量を測定していきます。
厨房-換気フード


当初の設計から、ガス機器を追加していたり、熱量の大きな危機に変更している場合は、換気量が不足する可能性がありますので注意が必要です。機器を変える、追加するといったときは、事前にフード等の換気設備の容量を確認しておかなければなりません。また、フードフィルターの油汚れは換気量低下につながりますので、定期的な清掃を心がけて下さい。

居室等

ここで言う居室等とは、劇場や映画館などの客席がある部屋等を指します。大きなホールなどでは、上部に窓が設置されていても、開放されるかどうかはわかりませんので機械換気設備の設置が必要となっています。少し考えてみると、映画館などで窓を開放したまま上映するようなことはありませんね。
また、居室の大きさに対してたくさんの人が入りますので、一般の事務室などよりも大きな容量の換気設備の設置が必要です。そうでなければ最大収容人数に対しての必要換気量が満たされなくなってしまいます。
この検査では無窓居室と同じように、換気設備の換気量を風速計で測定していきます。

上記の各室の測定に加えて、給気口・排気口の設置位置や取付状況、風道の材質、換気系統の確認など、それぞれ関係する箇所の状況も、不具合や劣化損傷がないかみていきます。

防火ダンパー

防火ダンパーは、本来防火設備に分類されるため平成28年6月施行の法改正で新設された「防火設備定期検査」で見るべきものなのですが、換気設備の風道に設置されるもので、換気設備検査と一緒にみた方が合理的であるとの判断から、この検査で点検します。
防火ダンパー
防火ダンパーは、防火区画を貫通している場所などに設置されており、火災時に炎や煙がダクトを通じて広がらないように遮断するための設備です。きちんと作動するか、取付けられている温度ヒューズの溶解温度が正しいかどうかなど確認します。

排煙設備

建築設備検査で点検する排煙設備は「機械排煙設備」になります。排煙窓のような自然排煙設備については「特定建築物」の定期調査で作動点検を実施します。
排煙機
排煙設備とは、火災時に煙を機械で吸い上げ排出する設備で、屋上に非常用の電動機とセットになった排煙機本体が据え付けられています。この排煙機本体と各フロアの排煙口がダクトでつながれており、火災時に手動でボタンを押したり、感知器連動で作動します。排煙口が開くと同時に本体のファンが回り、一気に煙を排出してくれます。
では各フロアのどんなところに排煙口があるのかというと、主に地下や排煙窓が設置できないような場所です。つまりそのエリアで火災が発生した場合に、煙の逃げ場がない空間に設置されています。

この排煙機の能力も、排煙する区画の面積によって必要な容量が決められており、この検査で風量を測定して確認しています。換気設備に比べ、平常時に作動させる設備ではないので、年に1回の定期検査でしっかり作動するか点検しておかないと、いざという時に全く動かなかったということになりかねません。

非常用の照明装置

非常用の照明装置については、文字通り非常時に一般電源が失われた場合に点灯する照明器具です。中にバッテリーが内蔵されているタイプと、大きな施設では蓄電池が別の場所に置かれているタイプがあります。特定建築物の定期調査でも非常用照明のチェックをしますが、ここでは点灯確認だけです。
非常用照明の検査
建築設備の定期検査では「照度測定」まで実施しなければなりません。災害時の避難に支障がないように、最低限の照度が確保されているか確認していきます。また30分間点灯するだけの電池容量がなくてはなりませんので、バッテリーの寿命がくれば交換しなければなりません。

ちなみにこちらは非常用照明ではなく「誘導灯」です。


誘導灯は消防法で定められた設備で、避難時の明るさを確保する目的で設置されているものではなく、火災時に安全に屋外に避難できるように避難方向を示す設備となっています。

給水設備及び排水設備

飲料用の配管設備と排水設備をチェックするもので、この項目は各地の特定行政庁によって運用はバラバラです。検査対象から外されているところも多くあります。
この検査では目視で確認できる範囲の配管設備の検査となり、隠蔽部分や埋設部分については対象となっていません。主に、配管の錆や腐食、漏水がないか、貯水タンクの設置状況や排水ポンプの設置状況などをみていきます。

報告時期

建築基準法施行規則の中に「おおむね6月から1年まで」との記載がありますので、毎年の報告が必要な特定行政庁がほとんどです。そしてこれとは別に、国土交通省が定める検査項目については「1年から3年まで」となっています。これは検査の対象箇所が多く、一度に全数の検査が困難な場合に、最大3年間で全数検査できればいいですよという、建物の実態に即した形の緩和規定になっています。原則としては全数検査が良いのですが、建物の規模や用途によっては、なかなか費用面、建物の利用形態、時間・スケジュールの制約などから、毎年の全数検査は大変です。その場合は1年目、2年目、3年目の検査場所を計画的に決めて、3年間で全数検査できるようにします。

その他

初めての物件の場合は、全体の建築設備の設置状況を把握するのが意外と大変です。規模が大きくなればそれだけ設置数が多くなりますし、区画や対象室の利用状況を把握しなければなりません。古い建物では設備図面がきちんと残っていないことも多く、ダクトの系統やダンパーの位置など、特に天井裏の状況をつかむのに苦労する場合もあります。
1年目で設備の設置箇所や各室の利用状況、排煙口の位置と開口面積、ガス機器の設置内容、換気フードの寸法などを一度きちんとまとめておけば、2回目以降の検査は比較的スムーズに実施できます。

建築設備の検査では、現地調査に人数が必要になる場合があります。特に機械排煙設備のある建物では、1人2人では安全に検査を実施することはできません。建物の規模にもよりますが、最低でも4名程度の配置で検査を実施します。現地検査に人数がある程度必要となる場合は、当然費用もかかってきます。

その他、建物の用途によっては営業時間の制約があるため、営業終了後や店休日に検査しなければならないケースがあります。その場合、深夜や休日に実施することも多く、依頼先によっては割増費用がかかります。そこは協力して、よりスムーズに、また費用も抑えられるようにスケージュール等を調整することが大切です。

検査できる資格者

主に一級建築士・二級建築士、建築設備検査員となります。
ただし、建築士事務所でも建築設備検査に対応していないところもあります。風速計や二酸化炭素濃度計、照度計などの測定機器が必要になることと、設備検査を何度かやったことがないとなかなかすぐに検査報告するのには苦労します。建築設備検査員の資格を持った設備メンテナンス会社や、各種法定点検を行なう専門会社もあります。
建築士は、報酬を得て業務として検査を請け負う場合、建築士資格の免状を持っているだけでは検査はできず、必ず都道府県の建築士事務所登録が必要になります。

[用語]

法的には、特定建築物は「調査」、建築設備及び防火設備は「検査」という言葉が使われています。また国や地方公共団体が所有・管理する建物は「点検」という言葉を使用し、民間の建物と使い分けがされています。
ただし、本記事で使用する「点検」とは、一般的な用語として「チェックする」という意味で使用しています。

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